児童虐待の問題の難しさについて
児童虐待の問題の解決が困難であるのは、それが具体と普遍、経験論と合理論という、人間の思考の本性に深く根ざしている問題であるということが第一である。そして第二に、児童虐待によって自分の子供を殺してしまう者もいるので、殺人者の心理というものを完全に理解する必要があるからである。殺人というものは、通常の人間であるならば最もしたくない行為であり、またするべきでない行為とされているものである。しかるに、児童虐待の問題は、殺人というものがいかに正当化されるのかということを理解することなしには根源的に解決することは出来ない。
このことは換言すれば、ヒトラーのような人間を生み出さないためにはどうすればいいのかということである。それは、ヒトラーのしたことが絶対的正義であり、彼のように考え行動することがすべての人に求められる絶対的義務であると考え、そのような正義と義務が正当である社会とはどういうものであるかを究明し、そのような社会観、人間観はどのようにして生まれるかを明らかにすることが出来れば、ヒトラーのような人間を生まないことが初めて可能になるのである。ヒトラーの言う事を理解するなと言われることはあっても、彼の言う事を理解しろなどとは、現代においては決して言われない。これが、児童虐待の問題が世界的に社会問題となって久しいのにもかかわらず、解決に向けた進展が一向に見られない原因である。